年金はリタイア生活を支えるうえで大事な収入源です。
配当収入や不動産収入もリタイア生活には貴重ですが、高齢になると判断力等の問題で不安がでます。
その点で、年金は何もせず生涯受領できる安心感があります。自分だけでなく配偶者も遺族厚生年金は一生涯、受取ることができる永続性のある制度です。
そんな年金、サラリーマン時代は厚生年金として給与から天引きされますが、アーリーリタイアをすると、国民年金に切り替わるので、自分で納付しなければいけません。
その時、国民年金の納付の選択肢として、自分に何が適切かをしっかり検討することが大事です。
僕は国民年金についての理解不足や思い込みで、致命的なミスをしました。
今回、その情報を共有したいと思います。
アーリーリタイアで取り得る国民年金の対処方法
僕がアーリーリタイア時に取りえた案は大きくは3つありました。これは完全リタイアで離職する人にも該当する可能性があります。可能性として検討の余地や意義はあるはずです。
案1:国民年金保険料と年金付加分を60歳まで支払う
→リタイア後、年金の「リターン額を最大」にする案
案2:国民健康保険料を当面は払わず、将来どこかで追納する
これは”退職特例免除”を使い、当面は16,520円/月を納付する免除を受け、将来、追納(あとから国民年金を納付すること)をすることです。
→リタイア後、年金の「リターン額を案3より大きく」する(ただし、案1ほどの金額にはならない)
案3:国民健康保険料を払わず、将来も追納しない
これも、”退職特例免除”を使い、60歳の誕生日前月までずっと16,520円/月を納付免除を受け、そして将来も追納しないものです。
→年金の「リターン率を最大」にする(年金額は3案で最も少なくなりますが、自分の支払額に対してのリターンは概ね高くなる)
僕の失敗
僕はリタイア時、何も疑うことなく案1で進めました。
そのミスに気がつき、この数日は区役所や年金相談センターを訪問し最善策を練り直しました。
結果的に案2か案3の「国民年金保険料を納付免除させる」が望ましいとわかりました。
僕が見落としていたのは2点あって、
①納付免除されても「国民年金保険料の半分程度が納付されたもの」として計算され、自分が受け取る年金に加算されること。
→納付免除は全く加算がない(年金が完全に取り漏れる)と思っていた。
②離職や退職などの場合は、”退職特例免除”が適用され、リタイア直後から国民年金保険料の支払いが免除されること。
→所得が一定基準以下の場合だけ適用される制度と思い込んでいて特例を知らなかった。
こうした①、②の誤解で、リタイア時から今までの1年間の国民年金を既に20万ほど支払ってしまっていたのですが、残念ながら、その支払い済は返納されません。
失敗の要因は、案1以外の選択肢(国民年金保険料の申請免除制度や後納)を知らず、「国民年金はお得だから」と、早々に保険料を支払ってしまったのです。
国民年金は投資として効率が良いのは確かですが・・。
国民年金は10年で回収できる
国民年金を65歳から受給すると、その支払額は10年で回収できます。
つまり、75歳で分岐点となり、以降は長生きすればするほどお得になります。
また、案1にある国民年金の付加保険料(400円/月)は任意に付加することができ、その場合、この400円のうち200円(つまり半分)が年金として戻るのでさらに得です。
年間4,800円(400x12)を支払うと、年金受給額が年2,400円増えます。
つまりこの部分は僅かな金額ですが、2年で回収できます。
10年回収のシュミレーション
その付加保険料を除き、国民年金の保険料がいかに回収できるかみてみます。
国民年金を20歳から60歳まで合計480か月分を納めると7,929,600円となります(*1)。
*1: 国民年金保険料は、2023年4月1日時点、16,520円/月です。これを480か月(20年)分支払ったとすると16,520/月 x 480カ月 = 7,929,600円となります。
この約792万円の納付によって、2023年4月1日時点、「65歳から795,000円/年(*2)を受領できる」となっています。つまり10年で回収できます。
*1,2とも出典(https://www.nenkin.go.jp/oshirase/taisetu/2023/202304/0401.html)
厚生年金部分は将来、どうなるか微妙なところもありますが、国民年金部分はその運用も厚生年金とは違いますし、かなり「手堅い」とは個人的に思っています。
いずれにしても、「生涯受給」という長生きリスクになる点はメリットが大きいです。
「退職特例免除」にて国民年金の免除制度を使うべき理由
僕が本来取るべきだったのは、完全リタイアと同時に”退職特例免除”を使い、リタイア日から16,540円/月の納付を免除することでした。
退職特例制度とは、僕のようにアーリーリタイア(退職or失業)した場合など、収入がないので、特例措置によって国民年金保険料の納付免除を受けれることができるのです。
納付免除には、「全額免除」と「一部免除(4分の1、半額、4分の3免除)」があります。
国民年金事務所にて申請により審査後、適用の可否などが確定します。
僕は、まずは2023年4~6月の3か月分を「令和4年度分の免除申請」として審査に出します。これは目下進めています。
また、「令和5年度の免除申請」は2023年7月から2023年6月までの納付免除の申請手続きとなり、これは2023年7月以降に実施し、認定を受けるように取り進めます。
こうした免除制度を使うことで、自分が得られるメリットは、
①年金保険料の出費がなくて済む
②その金額を自分で資産運用し増やすことに使途できる
③追納は10年まで遡れるので、60歳まで支払いを保留し、その時点で改めて状況に応じた最適判断(追納するか否か)を決められる
④その時点で所得があって課税される場合は、その追納額を所得控除として使い節税もできるし、追納することで年金受給額も少し増える
⑤万が一、追納をしなくとも、国民年金保険料の半分程度が納付されたものとして自分が受け取る年金に加算される
国民年金の免除制度のデメリットやリスク
同時にデメリットやリスクを掘り下げてみました。
①免除制度にて国民健康保険料を支払わない分、将来受給される年金総額はやや減る(国民年金保険料の半分程度が納付されたものとして自分が受け取る年金に加算)
②免除制度にて、最も投資効率の良い「国民健康保険料の付加保険料(400円/月)を使えない
③追納をする場合、3年度目からは経過時間に応じた加算額も払う必要がある
④個人型確定拠出年金を利用できなくなる(僕は加入済みなので一時停止する必要があります)
こういった点がデメリットになります。
ただ、年金相談センターでは、④のような資産運用や節税の知識もないので、自分の最適解を探るには、自分自身で広く知識をつけたほうが良いのは確かです。
年金は終身なので収めたほうが得になる分岐点がある
さて、デメリットの1点目についてです。
自分のケースでシュミレーションをしました。
年金の全額免除を受け、今後、60歳までの国民健康保険料を支払わない場合、当然、それを払った場合よりも年金受給額は低くなります。
ですが一方、支払額(月1.6万円x月数)が免除され続けるのは、大きな総額となります。
よって、支払った総額を回収するとしたら約20年が必要で、つまり85歳までは「全額免除を受けておいたほうがお得になる」となります。
そもそも本来は支払うべき国民年金保険料ですが、アーリーリタイアで退職・離職をしていることで「全額免除」といおう選択肢が増えるのです。
全額免除を受けておいたほうがお得ですし、そのお得がプラマイゼロになるには20年かかる(85歳時点)ということです。
これは年金相談センターで僕の受給額を個別ケースで試算してもらい、その結果を自分でシュミレーションしたものです。
免除制度で個人型確定拠出年金が使えないデメリット
デメリットの4点目に記載した件です。
この免除制度が適用になると、個人型の確定拠出年金は一時停止しなければいけません。
僕のように50代でアーリーリタイアする場合は、既に確定拠出年金の積立額も大きく、今から停止になったところで大きな資産変動にはなりません。
また、それを受給するときに制度のメリット(非課税)が使えないわけでもありません。
現時点で給与所得はないので、確定拠出年金を使って所得税を減らすといった所得税の節税メリットは僕にはありません。
ですが若いサラリーマンの方だと、その分の積立額を増やせないとか、所得控除で使えないなど、デメリットはあるかと思います。
終わりに
今回、最も反省すべきは、「国民年金は投資回収が魅力だから」と深く考えず進めてしまったことです。
また、「退職特例制度」も知らず「所得があるから全額免除の申請適用は無理だ」と誤解していましたし、全額免除なのにその半分が年金受給に加算されることの認識もありませんでした。
実際、退職特例制度は情報として接することが少なく、認知度は低いのかもしれません。
年金相談センターに出向き、各種リーフレットも見ましたが、明確に理解できる取り上げられ方がみられません。
さて、僕にとっての結論は前述の通り、85歳で損益分岐点となるので、全額免除のまま多少年金が減っても良い(案3)か、当面のインフレなどの動向をみて、追納をしてなるべく多く年金を受領すると判断する(案2)のどちらかです。
向こう数年、それを見極めていきます。
なお、リタイア直後から収めた国民年金保険料は、それはそれで10年で回収できるので、本質的には、損をしたり悪いものでもありません。ただ、使える制度を使えなかったということです。
年金制度の適用は、個々人で状況で違うので、実際に年金相談センターに問い合わせをしてご自身の条件などを確認されることをおすすめします。
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