FIREの目的が「会社から解放されたい」というのをよく聞きます。
これは日本独特の理由で海外では滅多に見かけません。
日本の会社の、自由度のなさ、人間関係の煩わしさなどによるものです。
今日はそんな日本と海外の労働環境の違いについて、リアルな体験も含めて書きたいと思います。
労働環境がゆるいアメリカや欧米諸国
アメリカや欧州での労働環境は、概して、FIREをしたくなるような辛いものではありません。
僕自身も長い間、あちこちで勤務しましたが、職場のストレスはかなり少ないものでした。
そう思う5つの理由を挙げます。
1.オフィスでの勤務時間が短い
海外オフィスの労働時間は8時から16時ぐらいで、コロナ前でもリモート勤務が当たり前の自由度でした。
背景には、共働き家庭も多く、親が子供を学校に迎えに行くパターンが多いからです。
なにしろ、アメリカでは子供だけの下校はありえませんし、自宅や車に子供を放置すると警察に通報されますからね。
それゆえ「子供と一緒にいる」というのも親の大事な監督義務で、文化的にも重要視され、「子供の面倒をみるから今日はリモート」なんて理由は100%正当なものです。
ただ、16時~21時は家族時間を過ごす欧米人ですが、子供が寝静まる21時ごろから仕事メールやチャットに「オンライン中」と登場します。
子供の年齢に比例し、早い時間から仕事に戻る、そんなおもしろい家庭事情が勤務体系に反映されます。
働き方の自由度が高い分、日本のように「通勤が嫌だ」とか「子供が一人っ子で家で可哀そう」といった理由で「会社から解放されたい」という人が少ない環境です。
2.接待もランチが中心で楽
夜の接待もかなり少ないです。
基本はビジネスランチで、たとえ夜の接待を企画しても金曜日は家庭優先で成立不可となるので、せいぜい木曜日の夜です。
会社内の飲み会も、誰かの誕生日やら、大きな全体会議の後など、会議室にピザやビールを置き、好きな時間に来て、好きなだけいる感じです。
誰かが挨拶することもなく、居たければいる、帰りたければ帰るという、ダラダラです。
家庭があったり、社交的でない人は早々に退散しますが、それを咎めたりもしません。
それゆえ、飲みのストレスもありません。
3.上司は怒らない
海外で滅多に見ないのは「パワハラ上司が部下に怒り狂っている」という光景です。
感情のままに怒ったりする上司がいたら、たいていの部下は「プロフェッショナルさに欠ける上司だ」と批判し、HR(人事部)にハラスメント報告をします。
もちろん、上司がフラストレーションを表さないわけではありません。
でも、感情ではなく論理的に詰め寄るだけで、怒りに任せてぶちまける様子は、海外ではほとんど遭遇しませんでした。
そんなハラスメントの無さもFIREにつながらない理由です。
4.人間関係が良い(自分の手下を連れてくる)
上司は、もともと一緒に仕事をした部下たちを会社に引き抜き、自分の組織やチームを固めます。
上級管理職以上のポストを入れ替えると、例外なく、採用後半年ほどで自分の手下たちを会社に入社させ組織づくりを完成させます。
それゆえ、自分の上司が辞めると「俺たちも先がない」といった緊張感が生まれ、新上司に対して戦々恐々とします。
新上司もそんな「前任者の手下」にかなり冷たく当たります。
部下たちは陰でせっせと歴代上司に連絡を取り「俺を雇ってくれ」と相談したり、再就職先を探し始めます。
上司は信頼する手下ばかりを集めるゆえそこには「良い人間関係」が存在します。
組織の結果に責任を持つ分、誰を雇うかも自己責任を持っているからです。
日本のように、ハズレ上司にあたって「自分か上司の転勤まで我慢だ」という構造はそもそもありません。
5.休暇は楽しむもの
また、休暇は当たり前の権利であり、休暇明けは「いかに休暇を楽しんだか」という話題でもちきりです。
もし、休暇中に「寝てばかりだった」なんて発言したものなら「妻が可哀そうだ」「子供はどうしていたのだ!」といった批判の嵐です。
休暇が取れないことも無ければ、気兼ねすることもありません。
外国文化の勤務の大変さ
こうみると、労働環境については日本ほど働きにくい場所はありません。
ただ、海外の会社環境が楽かというと、そうでもありません。
責任に対して明確で、その結果、仕事の適性、興味、やる気が無ければ、すぐに淘汰されます。
でも、誰もが淘汰されても、職を転々とし、いずれ自分の居心地良い職場や職種に行きつくのも真実です。
仕事の責任の持ち方-営業マンの例
わかりやすいのが営業職です。
ノルマがあって、それを大きく下回ると解雇に、きちんと満たすとより大きな報酬となる「アメとムチの契約書」です。
それは、雇う側としては「営業マンを、自社の売り上げや利益に結び付く行動を取るように仕向ける」インセンティブ設計です。
事業部の「人件費予算」や「目標想定率」、「利益率」などをもとにエクセルでがちがちに計算して作ります。
その骨格をJob Descriptionに記載し、毎年、営業マンはそれにサインをします。
こんな骨格です。
★月間売上ノルマ:1,000万円
★年収設計:「基本給300万円」+「成果給」
★成果給の構成
*成果給は、成果がないとゼロで、100%に近くなればなるほどあがり、100%を境に「一気に高くなる」というインセンティブカーブを入れたりもします。
ノルマの50%以下=0=解雇候補
60%達成=基本給+100万円
70%達成=基本給+200万円
80%達成=基本給+300万円
90%達成=基本給+400万円
100%達成=基本給+700万円
120%達成=基本給+1,000万円
150%達成=基本給+1,500万円
ですが50%以下だったら、パフォーマンスレビューという特別の監視下と指導下に部下を置き、それをクリアーしないと、最終的には解雇を促すというムチです。
適性がなければ解雇に至りますし、適正があれば目いっぱい稼げる。
そうやって「ひと稼ぎして辞める」という人もいれば、いろいろな職場や職種を流れるように渡り歩き自分が居残れる場所に流れていく人もいます。
FIRE視点でみた日本の問題
以上のように欧米は仕事の自由度が高くビジネスライク(人間関係の煩わしさも少ない)環境ゆえ「会社から解放されるためにFIREする」というのは少なかったです。
その代わり、退社や解雇をきっかけにセミリタイアをして旅行に出かけたり、その後、またフルタイムの仕事に戻るため採用面談に来たりというFIRE卒業者も結構いました。
そんな流動性のある欧米に比較して、日本は「働きたくないのに働き続ける(会社にいれる)」という異様な状況を生み出しています。
その背景は、日本の終身雇用、雇用の流動性の無さがそうさせます。
終身雇用は、会社の方向性や課題が明確だったある時代には強い経営の元になりましたが、今のような不確定さの高い時代では「生きにくい会社人生」の根源となります。
そして、なにより日本の問題は「会社中心のマインドを強要すること」です。
プライベートな時間でも常に「仕事の事」を考えますし、年休でさえ「仕事をよりよくするための休暇」と考える「古い人」もまだ少し、実在します。
終わりに
なお、僕は日本をディスってるのではありません。
世の中には仕事のスタイルもいろいろなものがあり、それぞれのメリットデメリットがあります。
欧米のような自由さに、日本のような責任を取らないで済むイージーさがあれば良いのですが、そんな「いいとこどり」をできる会社は多くはありません。
何を取るかの問題で、難しい問題ですね・・・。
ただ・・・
「会社の仕事を取ったらあなたに何が残りますか?」
こんな質問が存在しない日がくれば良いなと僕は常々、思っています。
だって、これが「普通の質問」だと思う時点で、あなたは、会社に洗脳されているかもしれません。会社が全てというマインドは要注意です!
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