先日の記事で僕は ”「持ち家は負債だ」の主張に疑問だらけな件” と、持ち家は必ずしも負債ではない、資産形成に良い点もある、と綴りました。
すると読者の方からメッセージと人気YOUTUBER(不動産ジャンル)の動画リンクを送られました。
ということで、動画を拝見しました。
ちなみに前回の僕の投稿がこちらです。
僕の結論
登録数40万人越えの人気YOUTUBERで、再生数トップ3の該当動画は5万人の「いいね」があります。
コメントも「誠実でストレートな解説に好感持てる」と絶賛の嵐です。
その主張は「損得でいけば持ち家より賃貸が得」との内容です。
僕の感想としては「損得で賃貸が得」という説明に無理があるのと、やはり不動産投資に誘導したいポジショントークに思えます。
*「1秒でも早く家を買うべき人とは・・賃貸vs持ち家論争に決着」なる動画はとても参考になる点も指摘されています。
主張の骨格
動画では持ち家が損である理由として「コスト負担」と「キャピタルロス」を挙げています。
確かにこれは一般に言われる「持ち家が損」という論理で使われるものです。
①コスト負担
ローン返済額の7割が利子(として銀行に持っていかれ)、ほか固定資産税、メンテナンス費用、保険料など、負担がでる。
②キャピタルロス
35年後に5000万円の家(新築)が土地(1500~2000万相当)が残っても2000から2500のキャピタルロス。
こうした説明だけ聞くと、「銀行に金利分を抜かれる」とか「資産価値が下がる」と感じますが、本当にそうでしょうか?
35年のシュミレーション
まず、住宅ローンのシュミレーションサイトで試算すればわかりますが、5000万円を35年、1%でローンを組むと、総額として6000万円の支払(金利相当で約1000万円)です。最初は金利負担は確かに4割ですがこれが徐々に減って最終回はほとんどありません。
また、金利で1000万円と聞くと大きく感じますが、5000万円の物件を賃料20万円/月(管理費抜きの表面利回り4.8%として)で借りると、35年の総額が8700~8800万円です(更新料が2年に1か月分、家賃アップなし)。
仮に都内の60m2程度のマンションで35年間のリノベで2000万円(フルリノベで1200万円程度で可能ですが)やコスト負担で総額3000万円とすると、確かに持ち家が損(200万から300万円のマイナス)です。
また、35年のローン完済後の「目減りした資産価値」は1500万円と「資産70%ダウン」です。
でも動画で言及されていないのが、70%ダウンしても30%の資産が残っているのが持ち家で、賃貸は何も残っていない(つまり100%の資産ダウンと同じ)という点です。
YOUTUBERの方のご主張通り土地評価が1500万円残っているのなら、差し引きで1000万円以上は「持ち家が得」なわけです。
結局は資産残をどう評価するか
なお、資産の残存価値はマンションか戸建てか、都心部か田舎かなど、多くの条件が絡んできます。
比較的、都内のマンションであれば帳簿上は資産価値が大きく減っていても実勢価格として資産価値を持っているものもそこそこあるのが実態ではあります。
ですが、たとえ持ち家が残存価値を残す可能性があるとしても、「自分にとって最高の家」とこだわり条件を多々持って買った物件を、いざ売却で「もっと高く売りたい」と思っても、それは矛盾となります。
自分にとってこだわり(一般的大衆には受けない条件)を持てば持つほど、自分には良くても他人には価値を感じないかもしれません。
資産価値は自分の愛着ではなく「世間一般の受け」とか「ニッチさやレアさで価値を生み出す」といった他人目線での需要の広さや強さが決めるものです。
一方で、例え残存価値ある持ち家を持っても、
・35年間、持ち家が災害にあったり、予期せぬ費用負担(施工の問題があるなど)の心配もしないといけない
・35年間の間の家族構成の変化(家族4名なら20万円の家賃でも良いが夫婦2人なら12万円の家に引越したい)への流動性を求めると持ち家は不利、
などの、デメリットもあります。
ポジショントークについての懸念
なお、僕は正義系ブロガーでもないですし、人のポジションを悪いとは思いません。
ただ、情報の受け手はコンテンツの裏事情を見破るリテラシーは必要だと思います。
この動画の場合、最終的には「資産を作りたいなら持ち家はダメ。最初の1歩でハズレじゃない不動産投資をするべき」という結論にもっていってます。
そこに矛盾があります。
持ち家より「賃貸をする人が得」と言いつつ、なぜ、投資用不動産を勧めるのでしょう?
だって「借り手が得」ならば不動産投資を勧められて物件を取得するあなたは「オーナー」になって「不動産所有者として損」になるわけです。
しかも、投資用ローンの金利負担は住宅ローンより高く、また固定資産税の負担優遇や住宅ローン減税も使えません。
「この矛はなんでも切れる」「この盾は絶対に割れない」と、矛と盾を売る商人に「その矛と盾を戦わせたらどうなる?」と聞くと困ってしまう「矛盾」と同じです。
ポジショントークの裏事情
投資用不動産を売る人にとって、困った顧客というのは、持ち家で住宅ローンを組んでいる人です。
なぜなら既に住宅ローンがあると金融機関の投資ローンの評価にマイナスになり易くなります。
投資用不動産を売るうえでは持ち家の住宅ローンが足かせなので(*)、こうした「持ち家牽制をしている」というポジショントークにも思えます。
*金融機関の投資ローン評価では、申請者の持ち家の実勢価格がたとえ高くても、その通りの価格評価をしてくれない(評価額が厳しい)ので
いずれにしても、賃貸者が得なのか、大家が得なのか、一貫性が無いように思えます。
なお、YOUTUBERの方の主張が当てはまるのは「将来的に不動産投資で生計を立てたい人」です。
その場合、持ち家を持たずに不動産投資で物件をどんどん増やし、いずれその賃貸益を原資に自分の賃貸やマイカーを「経費」とする方法です。
もしそうならば動画は「賃貸が得、持ち家が損」ではなく「不動産ビジネスの成功には持ち家はデメリットに」となるでしょう。
終わりに
持ち家は一生で最も大きな出費になるので「自分としての見解」を持つべき大事なテーマだと思います。
なので、しっかり知識やリテラシーをもって情報を理解することも大事だと思います。
このYOUTUBERの方は世間のイマイチな物件投資やその理由も批判し、無理な投資が招く問題も真摯に取り上げていてますし好感を持てます。
今回「匿名さん」のご指摘でこうして動画を拝見し、僕の見解を回答させていただきましたが、匿名さんにとって役に立つ分析や情報提供ができていれば幸いです。
ランキングも参加してます。参考になりましたらポチっとお願いします!