先日のABEMA PrimeでのFIRE失敗に関する座談会はかなり酷な内容でした。
なにしろ「話しの展開」として「7割の人がFIREを望んでいて興味津々・・」とフックをかけておいて、そこからのコメンテーターが寄ってたかって「そんなのはFIREじゃない、FIREなんて意味あるのか・・」では、まるでFIREへの期待や夢を打ち砕く闇としかみえません。
今回は、まず出発点の「7割がFIREしたい」というインターネット調査のソースで気になった点があるのでこれを取り上げます。
(番組の内容についての感想はいずれ書きます)
調査の概要
この調査は、株式会社AlbaLink(本社:東京都江東区、代表取締役:河田 憲二)が男女500人を対象に「FIREに関する意識調査」を実施し、そのデータをランキングにしたものです。詳細は訳あり物件買取プロにて公開されています。( https://wakearipro.com/financial-independence-retire-early/ )その概要は以下の通りです。
調査概要
調査対象:現在お仕事をしている方
調査期間:2023年4月22日~27日
調査機関:自社調査
調査方法:インターネットによる任意回答
有効回答数:500人(男性271人/女性229人)
回答者の年代:10代 0.4%/20代 18.0%/30代 35.8%/40代 30.0%/50代 12.8%/60代以上 3.0%
調査結果
①FIREしたい人は78%(390名/500名)
1位:「とても思う」=52.6%
2位:「まあ思う」=25.4%
3位:「あまり思わない」=17%
4位*「全く思わない」=5%
②FIREしたい人の「FIREしたい理由」*複数回答ありで、その順位、
1位:「仕事・会社から解放されたい」=137
2位:「時間を自由に使いたい」=106
3位:「好きなことをして暮らしたい」=53
4位:「働き方を選びたい」=36
5位:「面倒な人間関係から解放されたい」22
6位:「お金にとらわれず暮らしたい」=20
7位:「好きな場所で暮らしたい」=9
③ FIREするのに必要だと思う資産は平均1億900万円
個人的考察-FIRE願望はあって当たり前
まず、この調査のやり方であれば「約8割の人がFIREをしたい」と回答するのは極めて自然だと思います。
必然的に高い興味を示されると思う理由が2つあります。
選択肢(FIREメリット)のインパクト
「FIREをしたい理由」の選択肢をみれば、現役サラリーマンのうちこの「いずれの理由も魅力を感じない」なんていう人を探す方が大変です。
選択肢は複数回答可で、つまるところ「自由に生きたいか」or「好きなことをして暮らしたいか」or「仕事や人間関係から解放されたいか」or「働き方を選びたいか」と問いかけてるわけですから。
それでも回答には「(FIREを)全くしたくない」が5%もあって、きっとこれはFIREのメリット(自由、仕事や人間関係からの解放、お金にとらわれずない)すら興味がないか、それを上回るFIREしたくない特別理由があるわけです。
とても信じ難いですが。
回答者のコメントとして「生活が不安定だと思うから」(経済的な意味合いか、生きがい的な意味合いかは不明)の意見はその1つのようです。
他にはきっと「仕事に完璧に満足している」といった仕事全振り(FIREに興味なし)かもしれません。
回答者の偏差
また有効回答のうち30代、40代の占める割合が66%と偏っているので、50代や60代のように「定年がすぐ先」との出口近くにいるわけでもなくFIRE願望が高いのかもしれません。
仕事の中核として責任が重かったり、キャリアの不安があったり、社会そのものに不安だったりなど出口の見えない先々に悩みを持ちやすいでしょう。
ちなみに僕が選ぶ選択肢は以下の3つです。
3位:「好きなことをして暮らしたい」=53
個人的考察-必要資産額がやや多め
調査ではFIREの必要資産額に対する質問もあります。
その回答として「FIREするのに必要だと思う資産は平均1億900万円」とそれなりの額です。
FIREに対する経済的な敷居の高さを認識はしているようです。
*別の調査ではFIREを実施した資産として3000万円が平均というものもみかけました。
つまりこの調査を「願望」としてではなく「現実問題」として問えば、FIREを望む回答率はぐっと低くなると思います。
設問の順番を「FIREに必要だと思う資産額」を先に持ってくれば、FIREをしたいとの回答は減る気がします。
あるいは設問がそもそも「①興味があるが目指したいとは思わない」のか「②興味あって目指したいと思う」など、願望レベルか行動レベルかはっきりさせるとまた違うと思います。
どうも「FIREいいよね」って同意を多く引き出す作為を感じます。
ちなみに資産額は以下の通りです。
終わりに
結局、設問は「FIREしたいか?」というより「自由に生きたいか」or「好きなことをして暮らしたいか」or「仕事や人間関係から解放されたいか」or「働き方を選びたいか」という問いかけです。こうしたFIREのメリットを並べれば、社会の先行きへの悲観や不安の裏返しで「自由に好きなことをしてストレスフリーに生きれると良い」といったFIREの、特にRE(早期リタイア)願望は表れると思います。
調査の主催会社は不動産投資関連ビジネスなので、それだけFIRE信仰者(投資に興味を持つ人)を作りたい面もあるかと思います。
ただ、今回の座談会の企画側(Abema)がこの願望(調査結果)をフックとして使って興味を誘いながらも、FIRE失敗のみを取り上げて「FIREってわけわからない」、「意味がない」と袋叩きにする構図は、企画の建て付けとしてアンフェアな気がします。
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