FIRE観点での野村総研の富裕層ピラミッドの持つ問題点

2024-06-10

資産額

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野村総合研究所(NRI)の富裕層ピラミッドをみて「貯蓄1億円で富裕層になるぞ!」と目標設定する方もいると思います。

ご存じの通り、富裕層ピラミッドは保有する純金融資産に応じて5段階(超富裕層・富裕層・準富裕層・アッパーマス層・マス層)に分けています。

明快なベンチマークで使いやすい一方、ミスリードとなる問題点があります。

今日はそんな富裕層ピラミッドの活用上、注意すべき問題点を2つ指摘します

(出典:野村総合研究所、日本の富裕層は149万世帯、その純金融資産総額は364兆円と推計)より)

ミスリードとなる2点

この富裕層ピラミッドでの注意点は2つあります。

それは、

富裕層や超富裕層はもっと数が多い

②インフレ(貨幣価値下落)が考慮外

という点です。

それぞれ具体的にみていきます。

富裕層や超富裕層の人数はもっと多い

この統計データからは、超富裕層(5億円以上)と富裕層(1億円以上)は合わせて約149万世帯、2.8%となっています。

ですが実際の世帯数はもっと多いはずです。

なぜなら同社が指標とするのが「純金融資産保有額」なので、この定義では不動産リッチなどの富裕層・超富裕層が外れるからです。

実物資産に富んだ資産家の数は反映されていないということです。

純金融資産の定義

同社による「純金融資産」の定義は、

預貯金、株式、債券、投資信託、一時払い生命保険や年金保険など、世帯として保有する金融資産の合計額から不動産購入に伴う借入などの負債を差し引いた「純金融資産保有額」を基に、総世帯を5つの階層に分類し、各々の世帯数と資産保有額を推計しました。

と記載があります。

つまり、高い属性(医者、士業、経営者、給与の高いサラリーマン等)でも不動産投資をしていたり絵画やワインなどの現物投資を持っていても、それは評価されず、さらに借入金だけマイナス評価となります。

「純金融資産」は金融資産から「借入金」を差し引く一方で実物資産(不動産や絵画、骨とう品等)の評価額は一切含めなくなるからです。

具体的ケース

次の通り具体的ケースを想定してみます。

(プロファイル)貯金1億円を持つ富裕層が不動産を買ってマス層になる例

・職業:医者

・貯金額:1億円

*購入前までは「富裕層」

(投資イベント)

・都内一等地のタワーマンション(1億円)を住宅ローンを使って購入した

・頭金2000万円を支払った(8000万円が住宅ローンによる借入金)

すると以下の通りになります。

【購入前】

純金融資産=貯金1億円=富裕層

【購入後】

純金融資産=0円=マス層底辺

(試算;購入後の資産)

・貯金8000万円(2000万円の頭金に使ったから)

・借入金8000万円(住宅ローン)

・実物資産=1億円(*購入時の価格の資産価値とする)

→すると、純金融資産=0円=マス層の一番下

*預金8000万円-借入金8000万円=0円だから

この通り、例えばタワマン(億ション)を所有し現預金が8000万円ありながら「マス層の一番下」に位置することになります。

なおBS(バランスシート)を使えば総資産2億円、純資産1億円、金融資産8000万円となり、この中の「純資産」で「資産の実力」は示せますしそれが実態であるはずです。

この点を記事にしたのはこちらです。

総資産・純資産・金融資産の定義-「総資産公開」とは?

インフレ(貨幣価値下落)が考慮されていない

野村総研は2005年からこの定義を基準を変えずに統一運用しています。

富裕層等の区分ごとの比率や増加率を統一指標でトラッキングするためです。

ですが昨今のインフレは著しく貨幣価値は急落していきます。

今は純金融資産が1億円で「富裕層」ですが(それでも今の物価では購買力が大きいとは思えない)、10年後までインフレ3%が仮に継続すると1億円は7000万円強の価値へ下落します。

富裕層というネーミングと実態はますます今後も乖離していくでしょう。

注意点

そもそも、野村総合研究所の金融コンサルティング部主幹の本調査なので、彼らのクライアント企業向けデータとして調査した意図があるのでしょう。

クライアント企業が富裕層をターゲットとする際に、世帯数や推移などマーケティング情報は有益です。

その「富裕層」も、アセットリッチ(不動産等を持つが資産にキャッシュが少ない)よりキャッシュリッチ(現預金や流動性資産が豊富な人)のほうが、クライアント企業にとって自社金融サービスを購入する高いポテンシャルになるからです。

そうした理由で野村総研としてはその定義で「購買力のある富裕層」をフォーカスしたいのだと思います。

こうしたリスクを留意しデータを使うことが重要だと思います。

終わりに

以上、富裕層ピラミッドは明快な区分けですし「資産形成の目標」とするには便利です。

ただし、富裕層というネーミングに対し実際の購買力は物価高のこの現状、以前より見劣りし、今後も増々インフレでネーミングと実態が乖離していきます。

さらに言えば、富裕層に該当する人も「富裕層から外れたくない」とこだわって安全な現預金で資産運用をしてしまうと、インフレ負けして資産価値は目減りするかもしれません。

富裕層ピラミッドのそうした問題点を理解しつつ、自分なりの資産運用戦略を持つて臨むことが重要だと思います。


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自己紹介

2022年3末に完全リタイア。FIREの自由で創る”自分らしいセカンドライフ” としてFIRE-Driven Lifestyle Innovationをテーマに、日々の気づきや経験を発信して精神的に豊かなFIREを応援します。
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