日本で「富裕層」と分類される「1億円(純金融資産保有高)」はその経済価値が目減りしています。
なぜなら、①インフレで「今の1億円は数年前の1億円より割安」と感じるだけでなく、②円安で「世界からみると円資産は割安」とダブルに価値が減っているからです。
世界の基軸である米ドルで「ミリオネア(100万ドル保持者)」となるには、1ドル100円の時代なら1億円を持っていれば該当します。
ですが今の1ドル160円の時代では、1億円は0.625ミリオンでしかなく、1.6億円の資産を持ってはじめて世界で「ミリオネア」を名乗れるのです。
今日はそんな世界の視点で「ミリオネア(米ドル億万長者)」が世界にどの程度いるか、うち日本人の割合がどの程度かをみていきます。
ミリオネアとは
「ミリオネア」とは英語の「millionaire」に由来します。
通常、ミリオネアというのは純資産で語られます。
純資産は、総資産から負債を引いた額のことで、それが100万ドルがあればミリオネアとなるわけです。
アメリカでは「ミリオネア=富裕層」と認識されています(昨今はインフレでその限りではありません)。
世界のミリオネアの割合
世界のミリオネア(米ドル億万長者)について、その割合がどの程度なのかを調べました。
これはスイス最大の銀行であるUBSが発行する「世界の家計の富に関する年次報告書(The Global Wealth Report)」に基づく結果です。
ちょうど今月、2024年版の最新データが発行され、それによると図の通りミリオネアは1.5%、5800万人ということになります。
*同レポートでも表記は人口ベース(n=37.7億人)でこれは世界の成人数です。
*「富(Wealth)」は純資産で計算されています。純資産は所有する金融資産と実物資産(主に不動産等)の合計から負債を差し引いた価値として定義されます。それゆえ上の図のタイトルには明確にわかるよう富(Wealth)ではなく純資産としました。
*同レポートの発表についてのプレスリリースは以下のリンクです。
(https://www.ubs.com/global/en/media/display-page-ndp/en-20240710-gwr-2024.html)
世界のミリオネアに占める日本の割合
なお、ミリオネア(100万米ドル)を超える5800万人のうち国別の割合がレポートで示されていました。
それによると約283万人で、ミリオネア全体に占める割合は4.9%となります。
驚くことは、2028年に向けた成長が28%と、かなり高い成長率が期待されていることです。
ただし、去年のレポートからは日本のミリオネアの数は大幅に減っている(46万人)です。
これは円安によってこれまで該当していた人が基準値をみたないと集計された数も多分に含まれていると思われます。
終わりに
以上、世界におけるミリオネア(米ドル億万長者)の比率をみていきました。
今のレートでいくと純資産として1.6億円ほど保有している人が該当することになり、それが日本には287万人いるということです。
ちなみに有名な野村総研(NRI)の富裕層ピラミッドは「富裕層以上(純金融資産が1億円以上)」は2021年の結果では150万世帯です。
以前も記事にて指摘しましたが、NRIの定義は金融資産のみです。現物資産(不動産等)の実質価値(評価額-借入負債)は含まれないどころか借入金も金融資産から差し引く前提です。UBSの前提と異なりその点は不一致するのは前提の違いと注釈しておきます。
いずれにしても、もはや1億円が持つ資産価値は「富裕層」と呼ぶにはかなり弱くなっている(世界基準では円安が加わりさらに弱い)という実態になっているわけです。
ちなみにアメリカの場合でも日本より大きなインフレ率であるためか、従来の富裕層(ミリオネア)は今は「1ミリオンではなく2.2ミリオンぐらいなければ富裕層とは思えない」という国民の認識も広がっています(Charles Schwab's 2023 Modern Wealth Survey)。
次回以降、このUBSレポートとNRIのそれをクロスに分析したり所感を綴ります。
ランキングも参加してますのでぜひポチっとお願いします。