アーリーリタイアをした2022年以降、勤めていた会社も他の国内企業も賃上げのトレンドにあります。
僕と同じタイミングでリタイアした民としてはきっと「よりによって自分がリタイア後に賃上げなんて」というのが一般だと思います。
もちそんタイミングの悪さは多少なり癪には感じますが、それでも嫌気がさすほどでもありませ。
それよりも「物価ばかり上がって賃金が増えない」といった「ますます貧しくなる社会を感じるほうがよっぽど息苦しい」からです。
今日は賃上げについての思いを綴ります。
賃上げの実態
実際のところ「賃上げを実施予定」の企業割合は大手はもちろん中小企業でも増えています。
2022年度;45.8%、2023年度;58.2%、2024年度;61.3%といったように、増加傾向にあるとの調査結果もあります。
*日本商工会議所・東京商工会議所の「中小企業の人手不足、賃金・最低賃金に関する調査」
そんな賃上げが持続的なものか一過性のものかは、とても大事なポイントだと思っています。
一過性とは、政策(企業が得た利益や内部留保を放出させる税制等の優遇政策で賃金がつりあがること)や人手不足(働き手が少なく需給の関係で賃金がやむなくあがる)といった消極的要因で持続可能ではないものです。
なので願わくば、労働者の「生産性向上」という建設的で持続可能な方法での賃上げであって欲しいのです。
生産性で賃金があがる例え
生産性で賃金があがるというのは「ブラック企業のように休む間もなく労働させるとか、長時間労働による残業で給与が上がる」というものではありません。
例えるなら、「3人でやっていた仕事を1人でできるようにする」のが「仕事の効率」です。
無駄を省くことです。
例えばITツールがなかった平成の初期の仕事ぶりなんて今から思うと生産性が低くて驚くものです。
ある「文書」を社内に共有するときに「電子メール」がないので、超アナログ対応となるのです。
その時代を知らない若い人は想像つかないかもしれませんが、
①(自分が)ワープロで資料を作る、
②(自分が)プリントアウトする、
③(自部門の派遣さんが)コピーする、
④(同)コピーを各部門に持っていく、
⑤(他部門の派遣さんが)各部門で文書回覧のリスト(リストには〇〇部長、△△課長、XX係長等々の名前と押印欄があるもの)をホッチキスでとめる
⑥(同)文書を回覧する→各自が読んだら押印して次の人に回す
⑦(同)後日、文書を回収しファイリングする
ということで、1つの文書が共有完了になるまで自分(①、②)、自社部門の派遣さん女子(③、④)、他部門派遣さん女子(⑤、⑥、⑦)がかかわります。
閲覧者がその書類をコピーして手元に置いたりするなどもあり、そうなるとデジタル保存ではなく紙文書としてのコピー代からコピー時間の人件費コストも奪われるのです。
それに比べいまの時代は「電子メールに文書添付し送信すれば即時終了」です。
平成時代は関係者含めのべ数日人の稼働に、開始から完了まで5日はロスする、つまりは「生産性が全然違う」のです。
あえてわかりやすくするために時代を超えてアナログとデジタルの違いで説明しました。
本質は「自分1人が3人分の仕事をカバーすることで自分の賃金が1.5倍にも2倍にも増える」といった生産性向上による建設的な賃金アップです。
名ばかりの経営努力と言って3人の給与を限界までコストダウンしてそれを 「今少し引き上げましょう」といった賃上げではないのです。
無駄な会社の仕事
なお、ITツールを活用して生産性を上げる以前の問題として、まだまだ日本的な仕事のやり方で効率性が削がれることも多々あります。
例えば、
・電子メールを送ったらまた電話をしたり根回しでいちいち説明する
・結論が出ない無駄な会議をする
・自分の成果をアピールするような無駄な資料ばかりを作りたがる
・社内で決まったことも「気に食わない」と従わなかったり勝手に行動する
デジタル化の活用以前に「仕事のやり方」で生産性が上がらないことも、日本の会社では多々見当たります。
その結果が日本の1人当たりGDP(国内総生産)が2022年のIMFのデータでは世界で27位だったりと、長年ぱっとしない理由なわけです。
そんな無駄な仕事は罪な訳で、当の本人は「生産性」なんて観念がなかったりするのです。
終わりに
ということで、物価があがるなかでそれを上回る賃上げがあってこそ豊かになるわけです。
賃上げが労働力不足や政治的な理由から来るものではなく、生産性の高まりといった構造的な変化から来ることを祈るばかりです。
そうでもなければ、また次の局面では上がった人件費を価格に反映してモノの値段が上がるだけの負のスパイラルが続くだけです。
サラリーマンの方は効率の良い仕事環境でお金をバンバン儲けていただき、リタイア民なる自分も生産性をあげる企業に株式投資をして応援する。
そんな正のスパイラルであるならば、「自分がFIREをしてから賃上げが起きた」と粗末な話ではなく、心より喜ばしく思う限りです。
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