早期リタイアをした時点で資産に占める「現金比率」は異常に高い状態でした。
それは金融資産に対しては52%、純資産に対して37%です。
リタイア時は退職金の入金や、リタイア3年前に証券口座の閉鎖で株式売却益(銀行口座に現金を寝かしていた)のがあったからです。
リタイア生活を迎える時点で手元に多くの現金があることは、安心材料に思えるかもしれませんが、実は僕にとってはとても居心地が悪いものでした。
そこで今日は「リタイア時点の高い現金比率から感じた3つの不安」を綴ります。
リタイア時の純資産ポートフォリオ
まず、2022年3月末の退職時における資産構成(純資産ベース)です。
会社からの退職金入金や各種清算が終わった5月末時点を資産面での「リタイア基準点」とし、以降、リタイア後の資産推移をトラッキングしています。
そのリタイア時点の資産ポートフォリオはこちらです。
左の円グラフの通り、純資産に対して現預金は37%で、これは非現金(資産運用中)の円建および外貨建ての債券・年金等や株式の合算額とほぼ同等です。それだけ現預金比率は高いものでした。
また、右の円グラフの通り国際分散も中途半端なもので外貨資産がまた全体の20%程度です。
こうした状態から3つの不安がありました。
①インフレによる資産(現金)目減り
リタイア当初は給与収入という後ろ盾を失った状態ゆえ「投資でリスクを取って資産を減らすより現金として持っている方が安心かも」とふと思うことはありました。
でもそんな考えはデフレ思考で、リタイア当時の経済情勢を踏まえるとやはり「現金は危ない」と思い直しました。
リタイア直前まで住んでいた欧州は特に酷いもので、現地の電気代が異常な勢いで上がったり、サプライチェーンが混乱しトラック運転手の給与が跳ね上がったりと、物価上昇はすごい勢いでした。(そりゃ、ロシアに資源依存する西側ヨーロッパは酷いものでした)。
インフレは日本も避けられないと思ったのです。
現金は安定資産ではありますが同時にインフレに弱い資産です。
もし2%の物価上昇が20年続いたら1億円相当が6730万円という実質価値に下落します。
現金を抱えているとインフレで価値が目減りするリスクがあるわけです。
そんななか現金が金融資産の半分を占める状況は「持っているだけで価値が減って行ってやばい」といった不安を感じました。
②資産の成長不足
2つ目は、資産運用をしないと機会損失になるというリスクであり不安です。
資産はなるべく無リスク資産(現金等)ではなくリスク資産として持つことでその部分の資産成長を期待できます。
それは利回りの高い(よってリスクの高い)資産運用をする必要はなく、利回りが低くてもより資産を運用し少しでも成長させるように配備することです。
言い換えれば、現預金と資産運用に回して、より高い資産運用率(金融資産全体に占める資産運用の割合)を増やすことが資産有効活用であり、それが資産成長につながります。
もちろん低利回りでリスクの低い社債や国債などでも良いわけです。
なので、現金比率の高さは直ちに資産運用比率の低さ(リスク資産の少なさ)につながっていて、「資産全体の成長が不足する(成長の原動力がない)」といった居心地の悪さを感じていたわけです。
きっと給与収入があればそれでも資産は増えるので気にしないとは思いますが、給与収入がゼロというインパクトはよりおの「資産成長をしない状態」に不安を抱きます。
③投資の粒度が高くなりリスクが集中
3つ目が、現金比率の高さを解決するため現預金を早く投資に回そうとすると、そんな焦りから「投資の粒度が大きくなる」という問題です。
粒度とは一度に投資する金額の大きさのことです。
実際、僕が取ったアクションはコロナ禍明けの2022年の春からの不動産投資側に現預金の多くを使ったことです。
なにしろ株式市場はコロナ禍であっても動くものは動くので、それよりもコロナ禍で停滞していた観光地の不動産取得に振り向けました。
今から振り返ると、株式投資をしていたら今頃は大きな資産成長になっていたはずで、不動産投資側により多くの現預金を投じたことが良かったかはわかりません。
ただ問題はそこではなく、資産を上手に分散させながら成長させようとしていたのに、1つの投資粒度が大きいと分散が偏りがちになるというものでした。
まあ、結果的に投資がうまくいけば粒度が大きくても良いわけですが、やはりもっと理想的な分散ポートフォリオから逆算しながら投資を分散して進めるような慎重さに欠けたぐらい、現預金比率が高すぎて、不安というより焦りがあったと思います。
終わりに-反省点と本来の理想
こうした経緯から、リタイア時の現金比率の高さゆえに、①現金保有に対する価値減少の目減りいう不安、②資産運用効率の悪さといった資産成長の少なさ、③ひいては現預金の処分に焦って大口投資をする(リスクが集中する)という不安であり問題に面しました。
やはりリタイア時における理想は、
・リタイア時点で金融資産に対して50%ではなく20%ぐらいで現金を持っているべきだった(*)
・そこから相場が上がったところで株式等を売る(例えば100売る)し、相場が落ちたところで20買う、という比率でジグザグに現金比率を高めるアプローチ(つまり現預金を減らすというより増やすアプローチ)、
を取る方が、リタイア時の戦略としては良かったかもしれません。
リタイア前の皆さまは、「現金を持つことの意味」や「リタイア時点の居心地よい現金比率」を予め考え、適切な現金比率でリタイアを迎えることをお勧めします。