「リタイア民は物欲が無い」の定説が覆る時

2025-01-14

アーリーリタイア生活

t f B! P L

リタイア民に共通するトレンドがあります。

それはリタイアすると「物欲がなくなる」とか「シンプルライフで断捨離中」というものです。

しかし、こうしたトレンドも高齢になると逆転する場合があるのではないかと感じる出来事がありました。

「断捨離より買い物を楽しむ」といった気持ちが生まれる可能性があることです。

今日はそのエピソードを綴ります。

ある老人の会話

きっかけは、カフェで食事をしていたときのことです。

隣の席には70代後半と思われる男女が座り、テレビショッピングの話題で盛り上がっていました。

「見ているとつい買っちゃうのよね」と笑う女性に対し、男性も「先日はパンがよく焼けるオーブントースターを買ったけど、試したらすごく良かった」と楽しそうに話していました。

「年を取るとやっぱり物が欲しくなるねえ」と意気投合していました。

なぜ高齢者がこうも物欲を持つのか興味を持ち、会話を聞きながら考えていると、5つの「高齢になると物が欲しくなる」という心理が見えてきました。

1.失ったものを補完する心理

高齢になると「失ったものを補完する」という心理が生まれるのではないかという点です。

FIREや定年リタイアで仕事や子育てといった役割を終え、時間に余裕ができる生活変化から「物を整理しよう」となるのでしょう。そこから断捨離が始まります。

ですがそうした生活が長くなり、年齢を重ねるごとに健康や体力を失いだすと、失った生活力を便利なもので補なったり、失いつつある不安や寂しさを埋めたい心理で物を買うこともあるように思えます。

テレビショッピングは「今すぐ手に入れるべき便利なもの」を上手に宣伝するので、生活力の喪失や心の空白を取り戻す手段で購買するのではと思えました。

2.テレビショッピングが「冒険の代替」に

2つ目がテレビショッピングが「冒険の代替」になっている点です。

どうやら会話のなかで「旅行に行く機会が減った」という話題も出ていました。

高齢になると体力や健康上の制約で、旅行や冒険が難しくなっているのでしょう。

すると家にいながら未知の商品や便利なツールと出会ったり試したりすることは、旅行で体験したような「冒険」のような役割を担っているのだと思えたのです。

テレビショッピングの商品には例えば「〇〇いらずで美味しく〇〇料理を作れる」といったものがあり、製品を使って驚いたりすることで体験という刺激を得ているのでしょう。

これはもはや物欲というより新たな体験欲なのかもしれません。

3.自分のための「贅沢」を求める心理

高齢者だからこそ「自分のための贅沢を求める」という心理も大きいのでしょう。

彼らの買っている商品の必ずしも安い物ばかりでは無いようで、盛んに「〇〇円した価値はあった」と語り合っています。

ましては「余生でお金を使い切れないかも」と感じていたら、消費に抵抗感が減りますし、テレビショッピングの商品は比較的手軽な価格帯ですし、詐欺でもないわけで「ちょっとした贅沢」を安心して提供してくれます。

高齢者にとって「プチ贅沢で楽しむ支出」としてのニーズに合うのがテレビショッピングなのかもしれません。

4.老化への不安を解消するための買い物

また高齢者の買い物は「老化の不安解消」とも捉えられます。

健康グッズや室内でストレッチするような商品は「まだ自分は元気で健康に過ごすぞ」といった希望を与えてくれます。

実際この老人も「足で踏み込むと足腰が鍛えられる」といった何やら健康グッズ?(高齢者用のジム用品?)を買ったとか「まだまだ体を動かさないとダメだ」と語っていました。

やはり老化や身体の衰えに対する抵抗(不安解消)として買い物がモチベーションになっているのでしょう。

若い世代もジムの会員になって安心しジムにはほとんど行かないケースもあるわけです。

高齢者にとって「健康に良いことをしている」との安心感を満たしたいのかもしれません。

5.物欲は「生きる意欲」の一部

そして最後に、物欲は単なる消費欲というよりも「生きる意欲」という点です。

商品を選ぶ楽しさ、届くまでの期待感、使うときのワクワク感など、日々の生活に小さなリズムと喜びを与えてくれているライフスタイルの一部であり趣味のようなものに伺えます。

身体面での制限が増えてくる年代となると、実際の趣味にも制限が出てくるので、購買といのはそれを代替する趣味として「生きがい」になっているのかもしれません。

終わりに

この体験は考えさせられました。

今の自分は心身ともに健康な状態ゆえ、物を買うという行動に頼らずとも心理的・社会的に満たせる手段がいろいろあります。

ですが加齢で心身の制約を受けた高齢者からすると、購買は失いつつあるものを物理的・心理的に補い(①)、冒険の代替になり(②)、安心して贅沢を楽しめ(③)、老化不安を解消し(④)、生きがいになる(⑤)ということもあり得ます。

「次はどんな商品が届くのか」という希望が日々の生活にリズムを与えるのです。

すると「物欲」というより「生活への希望」であり「自己実現の道具」がモノを買う行為かもしれません。

FIRE民(僕を含め)シンプルライフは良いとの認識がありますが、その考え方は必ずしも正義ではないのかもしれませんね。

皆さんにとっても年老いたご両親がいて、物を買っているのなら、「無駄なものを買うな」とは言わずに暖かく見守ることも、もしかしたら良いのかもしれませんね。


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自己紹介

2022年3末に完全リタイア。FIREの自由で創る”自分らしいセカンドライフ” としてFIRE-Driven Lifestyle Innovationをテーマに、日々の気づきや経験を発信して精神的に豊かなFIREを応援します。
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