富裕層ピラミッドは、野村総合研究所(NRI)が日本国内の個人資産を5段階に分類した指標です。
資産形成の状況を可視化するツールとして有益ですが、最近、特にリタイア民にとってはある「落し穴」となることが気になりだしました。
その落し穴とは「富裕層ピラミッドに縛られてお金を使えなくなる心理が働く」というものです。
今日はこの点について綴りたいと思います。
富裕層ピラミッドの分類
富裕層ピラミッドでの分類は5段階で、
① 超富裕層:資産保有額が5億円以上
② 富裕層:資産保有額が1億円以上5億円未満
③ 準富裕層:資産保有額が5,000万円以上1億円未満
④ アッパーマス層:資産保有額が3,000万円以上5,000万円未満
⑤ マス層:資産保有額が3,000万円未満
となっています。
(出典:野村総合研究所、日本の富裕層は149万世帯、その純金融資産総額は364兆円と推計)より)
富裕層ピラミッドのメリットとデメリット
この富裕層ピラミッドを個人として使うメリットは、自分がどの層に属しているかが可視化されることで資産形成の進捗や現状の立ち位置を確認できることです。
例えば「準富裕層(5000万円以上)を〇〇年で目指す」と設定すれば、その目標に向けた具体的な投資運用の方法を具体化しやすくなります。
それが資産形成のモチベーション向上につながります。
一方で、こうした属性をラベリングすることで無意味なマウント合戦や劣等感を生んでしまったり、「資産の多寡がアイデンティティ化」してしまい、豊かさの本質が見失われたりすることがデメリットになりえます。
富裕層ピラミッドの落し穴
そのデメリットのなかでも、最近僕が気になるのが、「富裕層ピラミッドに縛られてお金を使えなくなる心理が働く」というものです。
例えば、リタイア後に資産を取り崩す際、「富裕層→準富裕層」とか「準富裕層→アッパーマス層」に「ランクダウンする」と感じ、お金を使いたくないという心理状態になることです。
すると、リタイア生活だからこそ「お金と時間」を使って今までにできない意味あることができるのに、そうした「人生を豊かにすること」から逆行してしまうのです。
そういった心理的な抵抗線が存在するという落し穴に気が付くことが何より大事です。
富裕層ピラミッドは一面しか可視化していない
また、そもそも富裕層ピラミッドが資産ランクを示す絶対的なものでもありません。
世界的な調査で活用されているツール(指標)も別にありますし、このNRIの富裕層ピラミッドはそもそも資産の豊かさの1面しか可視化していません。
これは以前、ブログ記事にも書きましたが、個人的には富裕層ピラミッドが示す「富裕層」というのはそもそも昨今の情勢とは合致しなくなっていて、
・ラベリングと実態の乖離:富裕層といった属性(純金融資産1億円以上)でも昨今の物価高や円安で「富裕層」とは程遠い生活実態だと感じている人(富裕層)が多い、
・インフレによる変化対応:インフレで貨幣価値が下落するなか、富裕層ピラミッドの基準値が過去からずっと一定で、こうした変化に対応できない、
といった難しい問題があります。
それに、以前ブログで記載しましたが、ここでの富裕層は比較的、流動資産の観点に偏っていて、現物資産によるアセットリッチな属性の富裕層や実力がこの定義から外れる問題もあります。
終わりに
以上、富裕層ピラミッドは資産形成の状況を可視化したり、資産形成の目標として活用するなどでモチベーションを得たり、投資戦略を具体化することに役立ちますし、個人的には「理解して使うのなら有益」だと思います。
それゆえリタイア民にとっての「落し穴」は意識しておく必要があるということです。
〇〇層を目指し、節約する苦難、会社の奴隷的仕事を耐え偲ぶ苦難、それらを乗り越えFIREをして自由となったのに、今度はピラミッドの属性を守るためお金を使えない・・。
これではまた奴隷生活に逆戻りというものです。
会社にかわって「お金の奴隷」になっただけです。
やはり、FIREを目指すまでは富裕層ピラミッドを効果的に使い、リタイアから「お金の呪縛から解放される思考や習慣の変化を取り入れることが大事です。
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