「気づけば富裕層になっていた」~そんな現象が日本では増えているそうです。
野村総合研究所(NRI)の富裕層ピラミッドの最新データ(2025年2月13日発表)では、富裕層以上の世帯数は前回推計(2021年)から11.3%増、資産総額は約29%増だそうです。
うち、準富裕層から富裕層以上となった「いつの間にか富裕層」は世帯の1~2割程度を占めていると推察され、主に40代後半から50代の一般の会社員だそうです。
野村総合研究所、日本の富裕層・超富裕層は合計約165万世帯、その純金融資産の総額は約469兆円と推計
この富裕層ピラミッドは過去記事で何度か取り上げていますが、今回、懸念として「いつの間にか富裕層を素直に喜べない」という点を綴ります。
富裕層以上の増加率
そもそも、日本の富裕層以上の世帯数が増えたと言っても、これが世界と比べても著しい成長であるかが気になりました。
そこで、過去10数年のトレンドを日米で比較してみました。
日本は純金融資産が1億円以上の世帯数(NRIのデータ)を使っています。
アメリカは流動性資産(Net Worth Asset)が1ミリオン(日本円で約1.5億円、1ドル=150円)というミリオネア数になります。
その結果、日本では2009年から2023年の間に富裕層以上の世帯数は196%の増加となる一方で、アメリカは253%の伸びとなっています。
グラフの元データとして作成したものはこちらです。「いつの間にか富裕層」とは
今回のNRIのレポートでは、「いつの間にか富裕層」というワードが出てきますが、これは2つのケースが考えられるそうです。
1つ目は近年の株式相場の上昇を受け運用資産が急増したために富裕層となった層です。
2つ目は「スーパーパワーファミリー」といって共働きにより世帯年収が2000万円以上といったパワーカップルの進展があるとされています。
いずれにしても、純富裕層から富裕層にいつの間にか上がった世帯であり、これは富裕層以上の世帯の1~2割程度を占めていると推察され、それは主に40代後半から50代の一般の会社員だそうです。
また、NRIの資料にも
「いつの間にか富裕層」は、給与収入の範囲内でこれまでと変わらない生活スタイルを維持しており、金融資産が増えても金融機関との付き合いはこれまでと変わらない・・急増した保有金融資産の適切な分散投資方針や、富裕層向けの金融商品特性に関する知識が十分でないケースが見られる・・。
とのことです。
そもそも今の物価感覚で「1億円を貯蓄できている」からとゴージャスな富裕層らしい暮らしなんてとても無茶です。それゆえ、「給与収入の範囲内で堅実な生活スタイルを維持する」というNRIの指摘は的をえています。
だからこそ「いつの間にか富裕層」とうネーミングも実態から乖離しているし、富裕層と線引きする定義も違和感があります。
とはいえNRIが狙っているのは(NRIの)クライアント企業が富裕層をターゲットにする時のアドバイザーとして機能したいだけなので、こうした「新富裕層を囲い込んで投資アドバイザーする機会がある」というメッセージなのでしょう。
この定義の疑問は、以前も記事にしました。「純金融資産」と括る以上は「資産家」と言われる不動産や現物資産を多く持った人は外れます。
終わりに
以上、富裕層ピラミッドで経済的豊かな世帯が膨らんだイメージを持ちますが、そこでの懸念は、
・米国のミリオネア推移と比較しても日本の富裕層の成長は大きく見劣りする
・純金融資産1億円で富裕層、いつの間にか富裕層とネーミングするのは実態から乖離し、富裕層と勘違いしかねない(多くは勘違いせず今まで通りの生活はしているが)
ということです。
なので「日本も富裕層が増えている」と喜べる内容というより、アメリカの成長の取り残されながら「本当に日本円で日本国内だけで日本政府を信じ切って資産を増やすことで良いのか?」といった疑問さえ生まれるレポートでした。
*なお、世帯の保有資産を定点観測してその成長を把握している貴重で有意義なデータだとは思います。
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