20代〜30代の若い世代から、「仕事が楽しいから70歳まで働きたい」、「生涯現役でいたい」といった声を耳にすることがあります。
特に会社員よりも、フリーランスや起業家など、自らの裁量で仕事をしている人にそうした傾向が強いように感じます。
僕自身も30代の頃はそうした言葉に共感し、「やる気があってすごいな」と前向きに受け止めていました。
でも、FIRE(経済的自立と早期リタイア)を達成した今、当時の考えはある種の“幻想”であり、危うい「思い込み」だったと気づいたのです。
今回は、この「生涯現役で働く」という発想のどこにリスクが潜んでいるのかをお話しします。
「ずっと働ける」という錯覚
30代の頃の僕は、体力も気力も十分にあって、「このままずっと働ける」と信じて疑いませんでした。
「年をとると集中力も落ちるし、体も思うように動かなくなるよ」と言われたことはあっても、どこかで「自分は大丈夫」と思っていたんですよね。
今になって振り返ると、それは典型的な認知バイアスだったと思います。
40代後半に差しかかる頃から、集中力やエネルギーの配分に明らかな変化を感じ始めました。それに伴って、仕事への向き合い方も自然と変わっていったのです。
若い頃には想像もつかなかった「働くことの負荷」が、年齢とともに確実にやってきます。
「今、自分が憧れている60代や70代の姿に、将来の自分を重ねられるか?」
そんな問いを自分に投げかけてみることも、大切かもしれません。
老後の“労働市場”の現実
もうひとつ見落とされがちなのは、「年齢を重ねたとき、自分が労働市場でどう評価されるか?」という視点です。
特にフリーランスや自営業のように、自分で仕事を獲得する立場の場合、高齢者に仕事を任せたいと考える人がどれだけいるでしょうか。
実際には「同じスキルなら若い人に頼みたい」というニーズが圧倒的で、年齢を重ねることがプラス評価に繋がるケースはそう多くありません。
もちろん、年齢そのものが「信頼」や「ブランド」になるような特殊な職業もあります。
でも、多くの場合、高齢になることで柔軟性やスピード、あるいは最新のITツールへの対応力が落ちることは避けられません。
つまり、「働き続けたい」と思っても、思うように「働けない」現実に直面する可能性があるんです。
それを理解せず、「働き続ければいい」とだけ考えて貯蓄や投資を後回しにしてしまうことこそ、人生の最大の「人的資本を過大評価した金融資本へのリスク」です。
それが、20代〜30代特有の「生涯働ける前提」からくる「最も危険な思い込み」と感じています。
FIREとは「働いてもいいし、働かなくてもいい」選択肢
この話をすると、「でも自分は仕事が好きだから、FIREは関係ない」と言う人もいるかもしれません。
でも、FIREの本質は「働かなくていい」状態を作ることではありません。
それは「働いても良いし、働かなくても良い」という状態を手に入れることなんです。
生活のために働く必要がなければ、やりたくない仕事を無理に受ける必要はなくなります。
年齢を重ねるとこれがとても大事です。なぜなら、加齢で何がより辛くなるか?それは体力の減少もありますが「生活のため自分の時間と魂を投げ売って労働する*」ことです。
*年齢が上がるたび、人生の残り時間が少ないのに、その時間を切り売りしたり、魂(大切に思うこと)を曲げて仕事をするのは、実態以上に損失と感じます。
ということで、「いつでも辞められる」という精神的な余裕は働き続けるうえでも大きな強みですし、「本当にやりたいこと」や「心から打ち込める仕事」に自然と出会えることにもつながります。
終わりに
「生涯現役で働きたい」という気持ちは、エネルギーに満ちた素晴らしい発想だと思います。
でも、それが油断や思い込みにつながってしまうと、将来の選択肢を狭めてしまうリスクにもなり得ます。
本当に自由に働き続けたいなら、まずは「働いても良いし、働かなくても良い」という経済的自立を目指すべきです。
今をがむしゃらに働くだけでなく、将来の自由のために貯蓄や投資を始めてみてください。
できれば40代までに「いつでも辞められる状態」を整えておくことを、心からおすすめします。
「生涯現役で働きたい」という人こそ、FIRE(経済的自立)を目指すことが、人生最大のリスクヘッジであり自己実現につながる有効戦略です。
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