FIRE後に「なんだかつまらない」、「自由すぎて不安」といった、期待外れの声が聞かれることがあります。
サラリーマン生活から解放され「好きな場所で、好きなように生きれる」といった理想のFIRE生活を実現しても、「こんなはずじゃなかった・・・」と感じる人もいるのです。
この原因のひとつに、「FIREと同時にすべてを変える」があります。
理想の生活を追い求めるあまり、居住地・生活リズム・人間関係などを一気に理想に向けてリセットする「急激な変化」が、FIRE後の違和感につながることも少なくありません。
今回は、FIRE後の生活環境の変化がもたらすリスクと回避方法を綴ります。
一気に変えることで起こる「期待外れ」の正体
FIREをすれば「自由と解放」を得られます。
そして、だんだんと解放感が減るにつれ、安定した「自由」を実感するのですが、その時に人によっては、
・「社会との接点がない」と孤立感を感じる、
・「誰とも話さない」という孤独を感じる、
・「やるべきことがみえない」といった不安を感じる、
などを経験したりします。
こうした問題は、FIREをきっかけに生活環境を大きく理想に向けて変える(例えば、見知らぬ土地で暮らす等)をすることで、かえって、FIREによる自由の恩恵より、「変化によるストレス」の方が勝ってしまうということになります。
僕が選んだのは「変えないFIRE」
僕自身、結果的には「変えないFIRE」を送りそれが良かったと思います。
もともと、FIRE後の理想は「田舎にプチ移住し、静かに自分のペースで暮らす」ということでした。
ところが実際は、FIRE直後の解放感で遊び呆けたり、旅行ばかりして「プチ移住先」を探したり、そんな時間が過ぎてなにも決断せずに今に至ります。
こうしてFIRE後も、「住む場所」や」「支出水準」はFIRE前となんら変わりません。
つまり、会社を辞めるという大きな変化だけが起き、その他の生活環境は何も変えなかったのです。
すると不思議なことに、自分がどこに不安を感じ、何を大切にしているのか、徐々に浮き彫りになり、そして驚くほどスムーズにFIRE生活に馴染むことができました。
FIRE自体が心理的に大きな変化をもたらすので、自分の生活環境はFIRE前から変えずに維持することで、心理変化だけに集中でき、結果として、自分の理想にフィットした自由なライフスタイルを早く作れるのです。
「変えないこと」の3つのメリット
この「FIRE後に生活環境を変えない戦略」は、以下の3つの効果があると思います。
① 変化のストレスを最小限に抑える
たとえば、FIREと同時に田舎に移住していたら、引っ越しや断捨離、地域の変化への適応など、想像以上のストレスがかかっていたと思います。せっかくの「FIRE後の解放感」が、そうした負担によって帳消しになるリスクもあったでしょう。
② お金の展望がより明確になる
FIRE後も支出水準をFIRE前と同じにすることで、給与収入ゼロという環境で資産がどう減っていくのか、変化を冷静に観察できます。その結果、将来的な資産計画や支出管理を、より現実的にシュミレーションできるようになりました。
③ 問題の本質が見えてくる
環境を大きく変えなかったからこそ、心理的に生じる課題として、例えば「退屈がつらい」、「会社で働かない自分は何者か(アイデンティティ問題)」などが、環境由来なのか、自分の内面にあるものか、冷静に見極めることができました。もしFIREと同時に移住していたら、あれこれ変化に紛れてこうした心理的な課題の原因が見えづらかったかもしれません。
終わりに
この「FIRE後に生活環境を変えない戦略」は、消極的な選択に見えますが、実は合理的です。
心理的な問題として、何が良くて何が課題か、それを明確にしてくれます。
そこから「理想に向けて変えるところを変える」が、結果的には、理想に早く届くと思います。
FIRE生活の第一歩で「まずは環境を変えない」という戦略は、FIRE直後の「解放感」をしっかり感じながら、そこからFIRE生活を足し算で築いていくという、実践的で効果的な方法だと思っています。
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